日常茶飯の暮らし

仕事と家事の合間のよしなしごと

エンタメ見聞録2025/04

春の陽気に浮かれて読んだもの、観たもの。

本・漫画

いい音がする文章

チャットモンチーの元ドラマー・高橋久美子さんの言葉と音をめぐるエッセイ。副題を見ると文章指南本っぽいのだけど(実際に紋切り型を逃れつつ心地よい表現を探すコツも紹介されている)、高橋さんに根付く音やリズムが、出身地を含めた環境や偶然的な出会い、文章と関係ない活動を土壌にして育まれてきた過程が緻密に描かれている。東予の言葉、祭囃子、児童文学。生活音がドラムフレーズを生み出し、詩が音楽を引き連れてくる。私がチャットモンチー「シャングリラ」「ハナノユメ」の歌詞やドラミングに酔いしれたのは高校生の頃。業界人から渡された箱いっぱいの洋楽CDを押しのけて作り上げた「いい音」のルーツや制作の裏側話を面白く読んだ。

海外子連れ旅★パーフェクトガイド!2019(地球の歩き方ムックハンディ)

子連れ海外出張・プライベート旅行の機運が高まっている。ゆるめのムックで情報収集し始めました。少し古い本なのは図書館で在架のものを手にとったから。準備から帰国までのToDoリスト、「子の年齢×やりたいこと」別の観光スポットや注意点がまとまっていて、ノープラン段階で読んでも楽しい。子連れ旅特有の落とし穴にも触れられていてよかった。連れ去り対策のため、ハーグ条約批准国に片親と子どもで旅行する場合には未成年渡航同意書が必要とか色々な意味で生命線やん。

名探偵ポアロ ABC殺人事件

絶え間ない子からの「こっちきて」「これやって」コールで2〜3分の細切れ時間が大量にある状態。まとまった読書時間をとれないが、児童書ならば何とかなるのではと、子ども向けに翻案されたクリスティー作品を借りてきた。細切れ一単位で10ページ読むのを繰り返し2日で完走。推理に関わる箇所は丁寧に書いてあるので、ミステリーを読む楽しさは担保されているが、やっぱり物足りないよね。

統合失調症になった話(※理解ある彼君はいません)

後述の映画「どうすればよかったか」を観て当事者視点の語りに触れたくなった。以前Twitterで試し読みしたコミックエッセイを思い出し購入。ポップな絵柄がかわいい。試し読み部分は、入院加療で順調に回復する様子が中心なのだけど、未掲載部分が壮絶。自発的にクリニックに出向いたのに受診できなくて、とうとう措置入院案件になって意識がはっきりした時には保護室&厳しい行動制限ってのは本当に理不尽よね。件の映画とは異なる医療アクセスのハードル。

統合失調症の予後は千差万別と聞くが、ズミクニさんは就業を目指すケース。再発に苦しむも福祉を頼りながら一つずつステップを踏んでいく。病から社会生活への復帰プロセスって報道とかでもあまり出てこないので、自分への備えとしても参考になった。

展示

リビングモダニティ:住まいの実験 1920s-1970s@国立新美術館

1Fの特別展示室をほぼぶち抜き、14の建築事例を島型に配置して、自由に回遊できるレイアウト。島を囲む海のように衛生、窓、素材といった各事例を貫くテーマの展示がある。

特に気に入ったのは、家族の変化とともに家の形も変わるムービングコンセプトを打ち出したスカイハウス(菊竹清訓・菊竹紀枝)。地面から浮かんでいるようなメインフロアの下に、吊り下げ式の部屋(ムーブネット)を増設・撤去できるようになっている。実際に増設された子ども部屋の写真や資料が展示されていて、その隠れ家チックな佇まいに童心が疼く。

こういう展示を観ると風通しのよい平家を建てたくなる。ただ、事例の多くが景観を考慮に入れた設計をしているので、まずは土地探しで難儀しそう。今回は欧州・北米(しかも20世紀半ば)が中心だし、酷暑厳しい現代の日本では建材や空調の工夫が必要かも…等々と皮算用をしていると、授業の一環で来ている建築系学科の学生と思しき団体が現れて、専門的な視点から事例を褒めちぎっていた。少しだけ立ち聞きさせてもらった。

戦後西ドイツのグラフィックデザインモダニズム再発見@東京都庭園美術館

デュッセルドルフ在住のデザイナー・ミュラー&ズゼックが収集した「A5コレクション デュッセルドルフ」を通じて戦後西ドイツのグラフィックデザインを紹介する企画展。ドイツのモダニズムといえば、反射的に「バウハウス!」と口をつくけど、それ以上は何も知らん状態。今回の展覧会では、ナチス政権時代を経て「経済の奇跡」とも称された西ドイツの躍進と共にあったグラフィックデザインの繁栄をタイポグラフィ、イラスト、写真を横断する形で見ることができる。特に写真コラージュを多用した映画ポスターは、斬新な手法をとっているのに硬派な感じもしてカッコいい。

LOVEファッション:私を着がえるとき@東京オペラシティアートギャラリー

コム・デ・ギャルソン」オーナーデザイナー・川久保玲の仕事に興味があって鑑賞。川久保さんといえばもっぱら「黒の衝撃」のイメージだが、今回展示されていた2つのコレクションは色彩豊かな作品ばかり。「Body Meets Dress, Dress Meets Body」(1997SS)はギンガムチェックや鮮やかなカラー布地を多用し、不自然な位置にフェザーパッドが仕込まれた作品が中心。腫瘍や妊娠後期のお腹のようでぎょっとする。

ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』に着想を得たコレクション(2020SS)は一見舞台衣装のようでに華やか。その一方で当時の理想からかけ離れたシルエットやスカートを覆うパニエは挑戦的だ。

いい出会いだったのがヨシオクボのオーバードレス。動物の形を模したチュールとワイヤーが結界のように身体を包み込み、まるで熊が憑依しているよう。

映画

どうすればよかったか?

久しぶりに映画に当てられた。退館直後から本作について誰かと話したくてうずうずして、深夜までレビューや監督インタビューを読み漁り、翌日はしっかり寝込んだ。

「(この家族は)どうすればよかったか?」という問いに対して回答するレビューはたくさんあって、監督自身も「(この対応は)失敗例」と評価している。私には彼らほど明確なことは言えないが、発症当時の時代背景が事情を複雑にしていると思う。

映画の核心部分を避けた感想になってしまうけれど、映像としては病老介助の側面が強く印象に残った。カメラが回りはじめる2001年時点で、すでに両親は後期高齢者になろうとしている。アルバムを捲りながら思い出を語る柔和な父、蛍光顕微鏡や薬品用冷蔵庫がひしめく自宅内研究室を案内する母、丸いダイニングテーブルを二人で丁寧にセッティングする様は、その年齢を感じさせない。それが足の怪我、認知症脳梗塞といったトラブルを挟んで両親の老いが顕著になっていく。だんだんと部屋が荒れていき、最後にはベッドなど介護用品が整えられたこざっぱりとした空間になる。一口に後期高齢者と言っても様々なフェーズがあって、その変遷が家族の関係をも変えうることに心が捉えられた。

もう一つ興味をひいたのは、医薬学に生きるという道、価値観を共有しているからこその手厚いバックアップ体制。百万円超えの機器を擁する自宅研究室を整え、(専門書ではないが)書籍の自費出版を支援する。映像では家族の本名や勤務先は伏せられているのだけど、見る人が見ればわかるもので、Google Scholarで家族の共著論文がヒットした。人の志はしばしば純粋なものでないし、適応的に形成された可能性も大いにある。それでも親子一丸となって同じ道を歩む様は(彼らのやり方には賛同できないが)、特に大学第一世代の私からしたらとても眩しく、だからこそ弟である監督も含めて誰も入り込めなかったのかなと思った。

興行・イベント

令和七年春巡業 大相撲横浜アリーナ場所

産休中に大相撲中継を観たのをきっかけに、子と保育園から帰宅してひと息というタイミングでテレビ中継を見るのが習慣になった。結びまでの数番、三役以上の取り組みだけつまみ食いするライトな楽しみ方。近場でも春巡業があると知ってタマリ席を確保して観てきました。

力士との距離が近くてファン感謝デー的な感じ。朝一で入場すると、幕内力士も続々と正面玄関から入ってくるし、エントランスホールの片隅で握手会をやっている。アリーナでは公開稽古。格上の力士が胸を貸すぶつかり稽古の迫力に魅入る。一旦退場して幕内力士の土俵入りのタイミングで再入場。土俵入りでは関係者と思しき赤ちゃんが掲げられていた。取り組みは本場所と比べるとゆるめだが、くすりと笑える演出や、釣り出しなどあまり見たことのない決まり手が出て面白い。

AKB48 65thシングル「まさかのConfession」個別握手会@パシフィコ横浜

前作ぶり2回目の個別握手会。今回からキッズエリアができたとのこと。

掲示板でニーズを疑う声もあがっていたけれど、ありがたく使わせてもらいました。他の子連れ客のお友達と思しき方が気さくに子に構ってくれて助けられた。聞けば幼児教育関連のお仕事をされているそう。どおりで接し方がプロのはずだ。お目当てメンバーのお話なんかもできて、現場でぼっち続きだった私にはその短いやり取りがとても温かく感じた。

今回も山内瑞葵さんと子と3人で輪になって握手。相変わらず照り輝いておられました。

はじめての握手会の模様はこちらの記事から。

rickenbacker650.hatenablog.com